クラシック音楽、歴史上作曲家アーティスト別
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マーラー 交響曲第9番 ワルター ウィーン・フィル

■マーラー 交響曲第9番

ワルター ウィーン・フィル 38年

第1楽章
第2楽章
第3楽章
第4楽章

初演と同じプロダクションが4半世紀を経て、厳しい政治状況のもとで再演した貴重なライブ録音。ユダヤ人のこの作曲家の作品をユダヤ人の高弟がユダヤ人のメンバーを多く抱えた楽団を率いて、最前列にナチス関係者が居並ぶ楽友協会大ホールで演奏するというこのセッティングはどのように実現できたのか不思議に思える。ワルターの回想によると、怒号が飛び交い、足を踏みならす騒然とした中でのライブだったということだが、その状況はこの録音からはわかりにくい。いずれにしても歴史上最も危険な上演の1つだったのは間違いない。ワルターは、この後すぐ亡命しなければならなくなり、楽団にとってもさらなる苦難の時期を堪え忍んでゆかなければならなかった。この録音の収録にしても、大がかりな機械が必要な当時の状況を考慮にいれなかったとしても困難だったことは容易に想像できる。原盤は戦時の混乱の中で隠蔽され、戦後に日の目を見た。失われたと考えられていたこの原盤が見つかった時、一番がっかりしたのはワルターだった。彼は、あまりにつらくてこのレコードを聴くことが出来ないと言った。そして、戦後の混乱の中で発売の許可を出してしまった自分自身の決定を後悔した。それぐらい、ここに刻まれている精神的戦いの傷跡はすざまじい。何かに憑かれたように戦争へと駆り立てられてゆく当時の雰囲気の中で、この演奏もまた、何かに引きずられるように激しく、そして疾走してゆく。ブラスが引き裂くのは、悲しすぎる弦の美しさである。それでも弦は、訴えかけるように優しげに音を紡いでゆく。紡ぎ続けてゆく。立ちのぼるトレモロの背後に見えるのは何だろう。人が世の不条理と戦わなくなることへの恐れだろうか。